不動産の賃貸借契約には、「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」という2つがあります。最近は、定期借家契約がトレンド化してきていますが、ふと気になって調べてみたら定期借家には思わぬ落とし穴があった事が分かったので、今回は大家さん向けの話をします。
◇普通借家契約と定期借家契約とは。
普通賃貸借とは一般的な賃貸借契約で、2年契約が主流です。2年経つと「更新」があり、更新料を支払って契約を撒き直します。借主保護の観点から作られた法律に基づいているので、借主にはとても有利なんです。どこら辺が有利かというと、一番は「大家さんから契約を解除するのが難しい」という点です。
例えば、家賃を滞納気味だとか、周囲に迷惑を掛けるとか、自分(もしくは親族)を住まわせたいといった理由で「この人に出て行ってほしいな」と思っても、入居者との契約を解除する事が現実的には難しい。まぁ家賃を全く払わない人だとか、迷惑が実害が出ていれば別ですが。
特に、古くなったので建物を取り壊す目的で退去を促しても、大家さんは次の家の契約金や引っ越し費用を払わなければならないケースが目立ちます。(立ち退き費用)
そんな背景もあり、定期借家契約が近年多くなってきました。定期借家契約とは、簡単に言えば「期限を定めた契約」です。つまり、例えば2年契約をすると、2年後には退去しなければ「不法占有状態」となります。勿論、普通借家と同じ感覚で「再契約」をする事は可能ですが、上記のような「出て行ってほしい入居者」とは再契約をしなければ良いので、出て行ってもらう事が簡単に出来ます。(正確に言えば立ち退き訴訟をすれば必ず勝訴出来るので出て行かせる事が出来るという意味です。)家主保護という側面で定期借家契約を採用する大家さんがとっても増えた気がします。書籍も沢山ありますしね。
◇定期借家契約の落とし穴とは。
ウチの会社でも定期借家契約を推奨していたのですが、最近ふと気が付いた事があります。それは、「保証会社は定期借家契約の期限が切れたら保証してくれるのか?」という問題です。保証会社とは、入居者の家賃滞納をした時に代わりに弁済してくれる会社の事です。(家主の代わりに家賃の請求をしてくれる会社)
契約期間中であれば当然、家賃の滞納が発生したら動いてくれるし、滞納が酷ければ立ち退き訴訟の費用も全て保証会社が負担してくれるのですが、例えば契約期間が終了したのに家賃も払わず入居者が居座った場合、契約期間外というか、契約が終了している事になるので、家賃の弁済も、立ち退き訴訟も負担してくれないのではないか?と思って、気になって付き合いのある保証会社何社かに連絡してみたんです。
そしたら、そんな事を想定していなかったらしく、契約書に照らし合わせて回答してくれたのですが、「家賃滞納は弁済出来ると思うが立ち退き訴訟は対応出来ないかもしれない」という事でした。契約期間終了という名目で追い出せる事がウリである定期借家も契約期間終了という事で保証対象外になってしまうという事です。
全部の保証会社がどうかは調べていないですけど、複数社とも同じ回答になったので、そこまで面倒を見てくれる保証会社は多分ないかもしれません。立ち退き訴訟をおこすとしても数十万~100万近くのお金が掛かったりします。となると、物件の性質に合わせて普通借家にしておく選択も必要なのではないでしょうか?という事を思いました。本日は以上です。1/3でも伝われば幸いです。