「ブローカーに騙されるな」—任せる相手で全てが変わる不動産取引のリアル

ブローカーと聞くと、「なんだか胡散臭い」というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、不動産や証券、保険業界でも「仲介して手数料(ブローカレージ)を得る人」は日常的に存在します。本来は正規のプロフェッショナルとして機能するべきですが、残念ながら自己利益を最優先し、相手の利益を顧みないブローカーが多いのも現実です。結果として、取引の過程で“騙される”ような事態が起こることもあります。

実際に、私がクライアントから預かっているとあるホテル物件でも、そんな事例が起こりました。


■ 水面下で仕組まれる「価格コントロール」

このホテルは、所有者から全面的に任されている物件ですが、所有者自身も別ルートで買い手を探していました。そこに登場したのが、いかにも慣れた様子のブローカーです。

その人物は、オーナーに「Aというファンドが8億、B(大手)というファンドが10億で購入希望を出している」と伝えてきました。私は、どちらであっても条件が整えば構わないと判断し、しばらく様子を見ることに。しかし、しばらくしてオーナーから「Bが完全に撤退した。Aもやっぱり7億で…と言い出している」と報告を受けました。

これは、不動産業界でよくある手口に似ています。最初は「高く売れます!」と売主を期待させて媒介契約を結ばせ、結局「なかなか決まらないので価格を下げましょう」と誘導し、安値で売らせるパターンです。
たとえば「5,000万で売れると言われたのに、最終的には3,500万だった」なんて話は珍しくありません。売主は相場感も情報も持っておらず、相手を信じて任せるしかない。だからこそ、こういった「情報操作」に引っかかってしまうのです。

今回のケースでも、後輩が偶然Bファンドの役員と知り合いだったため、確認してもらったところ、「そんな案件聞いたこともない」とのこと。つまり、Bが撤退したという話自体が作り話だった可能性が高い。さらにAについても、今月中に契約予定だったはずが、あれこれ理由をつけて遅延。これは“焦らせて安く売らせよう”とする典型的な駆け引きです。


■ 任せる相手を間違えると、人生ごと狂う

この件の顛末を知ったクライアントからは、非常に感謝されました。ただし、ここで一番伝えたいのは「任せる相手を間違えると、簡単に損をさせられる」という現実です。

不動産仲介やブローカーに任せたからといって、その人があなたのために動いてくれるとは限りません。特に「知人だから」「友人だから」「紹介されたから」といった理由で任せてしまうのは要注意。利害関係が絡んだ瞬間に、人は変わります。

だからこそ、その人がどんなスタンスで仕事をしているのか、普段から言動に一貫性があるかどうか、取引の透明性を重視しているかどうかを見極める必要があります。特に友人ならなおさらです。

「知っている人」と「信頼できる人」は別物です。

また、不動産取引では、問い合わせ数や買付の真偽など、見えにくい部分が非常に多く、オープンに報告されることも少ない。結果的に、「任せたのは正解だったのか?」と疑問を持ったまま売却が終わってしまうこともあるのです。


■ まとめ

不動産取引においては、「どこに売るか」ではなく「誰に任せるか」が最も重要です。
水面下の駆け引きが常態化しているこの業界では、あなたが知らないところで価格が操作され、知らないうちに損をしているかもしれません。

情報を持っている者が強い――これは不動産だけでなく、ビジネスの本質でもあります。だからこそ、任せる相手の「誠実さ」と「透明性」をしっかり見極めることが、資産を守る唯一の方法です。

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